霧多布岬に野生のラッコ 親子でぷかぷか、海面に浮かぶ
国内の水族館で3頭しか飼育されていないラッコが、北海道東部の浜中町の霧多布岬に生息、観察することができる。現在8頭~10頭がこの海域にすみ着いているとみられ、町では多くの観光客を呼び込みたい考えだ。
太平洋に面した浜中町の霧多布岬には、野生のラッコの親子がぷかぷかと海面に浮かぶ様子が見られた。仰向けで子供をおなかに乗せ、両足ひれをかきながら左右に回転したり、移動したりする姿はは愛らしい。別の日には2頭のラッコがじゃれあって遊ぶ姿も。
浜中町によると、霧多布岬でラッコの存在を確認したのは2016年ころ。周辺は波が穏やかで、エサとなる魚介が豊富、外敵が少ないことなどが要因という。
野生のため必ず見られるというわけではないが、「船に乗らずとも気軽にラッコが見られる場所」として観光資源としてのラッコの活用を進めている。
今年4月末には、ラッコのゆるキャラ「きりたん」も登場、イベントなどに参加している。漁業者とも協力し、「ラッコも好む海産物が豊かな町」として、地元産の魚介をPRしたり、地元キャンプ場の資料を用意する計画だ。
一方、日本国内の水族館のラッコは消滅の危機にひんしている。1990年代には飼育数は120頭を超えていたが、この30年で激減、現在は福岡県と三重県の2施設での3頭のみ。高齢のため繁殖は望めない。ワシントン条約で国際取引が厳しく規制され、米国からの輸入は98年、ロシアからは2003年を最後に輸入が途絶えたという。
希少となったラッコだが、背景には、明治45(1912)年に制定・交付された臘虎膃肭獣猟獲取締法(ラッコ・オットセイりょうかくとりしまりほう)がある。乱獲を防ぐため、ラッコとオットセイの猟獲を禁止・制限したもの。鳥獣保護管理法もラッコは適用外で、繁殖を試みるための保護や捕獲ができないのが現状だという。 (写真報道局 鈴木健児)